猫たちの狩り

赤いトカゲ


猫たちの狩り


 ネズミの人形がある。

 親指くらいの大きさで、たしか100円くらいで売っている。値段に見合ったちゃちなつくりだ。ちいさな塊にふわふわの毛が生えているだけで、ネズミのようには見えない。謎の生き物だ。

 なにもついていないただの人形タイプと、棒の先に紐がついていてネズミを振り回せるタイプがある。

 これが知り合いの猫仲間の間で評判なのだ。猫が夢中になって追いかけるとか、あれを早く出せと要求されるとか。

 うちの猫でも試してみた。
 ネズミをぶらぶらと揺らすとはっと身構える。
 目を大きく見開いて、瞳孔まで大きくなっていた。

 右に動かすと右へ、左に動かすと左へ、視線がついてくる。
 ふざけて作ったんじゃないかというくらいちゃちな人形なのに、効果はばつぐんだった。

 うちの猫は狩りをしている気分なのかもしれない。

 ネズミの人形を追いかけて、飛びかかる。
 手の先でちょんと触って逃げ出す。
 少しはなれたところから、気合を十分にためて、走りこむ。

 そのままネズミを見失って、走り去っていく……。

 ネズミを床に放置していたら、ようやく捕まえて、手で押さえつけていた。
 どういうつもりなのかわからないけれど、べろべろなめまわしていた。

 手の爪に引っかかってネズミが動くと、飛び上がって、「フゥー!」と威嚇していた……。

 ネズミを追いかけるときもへっぴり腰だったし、うちの猫は狩りが苦手なのかもしれない。経験がなくて慣れていないのということもあるだろうし、これは仕方のないことだと思う。


 庭で寝そべっているボスを見つけて、ゴロゴロ転がして遊んでいると、ボスが急に何かに反応した。起き上がって地面を観察している。

 ダンッ! と草むらを叩く。
 すると手の先にバッタがいる。
 しっかり押さえつけていた。

 ――さすがボス。見事な腕前だ。

 一瞬でバッタを捕まえた手際に僕は感心した。

 ボスはバッタを押さえる手を離したり、その隙に逃げ出そうとするバッタをまた押さえつけたりして遊んでいた。
 どんどんバッタが弱っていくが、お構いなしだ。

 ――こういうところは、ボスも普通の猫だな。

 と思った。

 いつのまにかボスは両手でバッタを挟みこんで持ち上げていた。もうほとんど動いていない。

 ――ほうほう、器用ですね。それからどうするのかな?

 と見ていると顔を近づける。
 そして――バッタをむしゃむしゃ食べ始めた……。

 野良猫だからそういうものも食べなきゃいけないんだろうけど、なかなか衝撃的な光景だった。


 うちの猫はボスに習ったのか、次第に狩りがうまくなりつつあった。
 ときどき庭でトカゲを捕まえたりしている。
 食べる気にはならないようで、くわえて僕のところに持ってくることもある。
 ぐったりしたトカゲが僕の前に置かれる。

「ありがとうございます。さすがですね」

 せっかく持ってきてくれたので、そう声をかけて頭を撫でるとうれしそうに目を細める。耳をぺたんとねかせて、ゴロゴロとのどを鳴らしている。

「ま、私にはこれくらい余裕だから、また持ってきてあげるわ」

 と尻尾をゆっくり振りながら、また庭へ出かけていく。
 楽しんでいるようで何よりだ。

 だけど最近は狩りがうまくなりすぎたような気もする。
 見せびらかしたいのはわかるのだけど、スズメをくわえて帰ってくるのだけは……やめて欲しい……。
 玄関に散らばった羽、小さな生き物の遺体。
 僕が悲惨な光景を見ることになってしまう……。

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小説家になろうに、猫のエッセイを投稿しています。
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