うちの猫のグルメ



うちの猫のグルメ


 猫を飼っている知り合いに、

「エサはなにを食べてるの?」

 と尋ねたら、

「パンとか、ご飯とか、何でも食べるよー」

 との答えが返ってきた。

 ――何でも食べるんだ! 

 とびっくりした。


 うちの猫はたいていのものを食べない。

 パンやご飯はもちろん、魚なら食べるだろうと思っても食べないことが多い。

 鯛の切れ端を用意したところ、においをかいだだけで口もつけなかった。
 これにはぐぬぬ、と若干の憤りを感じたけれど、釣りたてのアジは一口食べてもらえた。

 頑張って釣ったかいがあったというものだ。

 じゃあ普段何を食べているのかというと、キャットフードだ。
 それも決まったメーカーものしか食べない。

 堅くてもダメ。軟らかくてもダメ。
 いつもと違うものを用意すると、残してしまう。

 同じものを用意してればそれでいいのかというと、そういうわけでもない。
 飽きてしまうのか、なんなのか、ときどき残してしまうことがある。

 そういうとき、役に立つのはかつお節だ。
 これをかけると勢いよくエサに向かう。
 そして、大喜びで振りかけたかつお節だけを食べてしまう……。

 だから、かつお節を振り掛けるときはキャットフードとよく混ぜなければならない。


 エサを食べるときは近くで眺めていたいのだけれど、これもできない。
 近くにいると、ちらちら振り返って僕のことを気にして、

「やっぱり食べるのやーめた」

 という感じでどこかに行ってしまう。
 仕方がないので遠くから眺めている。

 とっても手のかかる子だ。

 エサを食べて、のどが渇くと陶器の水入れのところへ向かう。

 これはごく普通の水だ。こだわりのミネラルウォータではない。水道水だ。
 うちの猫はいつもこの水を飲んでいた。

 しかし、いつからか妙なことを覚えてしまった。
 洗面所の蛇口から出てくる水を飲むようになったのだ。
 どこかに溜めた水じゃなくて、落ちてくる水がいいらしい。

 糸のように滴り落ちる水を舌の先で受け止めて、ぺろぺろとなめるようにして飲む。
 よほど気に入ったのか、目を細めて延々と飲む。

 水を出しっぱなしで放置するわけにはいかない。
 飲み終わるのを待って、僕が止めることになる。

 そんな僕のことなどお構いなしに、猫は時間をかけて飲み続ける。
 待たされるこっちの身にもなって欲しい。

 まあ、うれしそうだからいいのだけど。


 そもそも猫が自分で水を出すことはできないので、出すのも止めるのも全部僕の役目になる。

 うちの猫がタッタッタッと洗面所に駆けていって、洗面台に乗り、

「わたしは水が飲みたいんだけど」

 と僕を見つめる。
 洗面所は暗いので猫の目が光っていたりする。
 それを追いかけて水の用意をする。 

 ここでふと思ったことがある。

 ――うちの猫は僕のおかげで水が飲めることを理解しているんだろうか?

 もしかすると、僕がいたら自動的に水が出てくるくらいにしか思ってないのかもしれない。
 そうだとしたら残念なことだ。

 ――こんなに献身的に水のお世話をしているのに……。

 そこで確認してみることにした。

 洗面所に行っても眺めるだけ。水を出さずに待ってみた。
 猫はうろうろし始めて、

「わたし、とってもいらいらしてるんだけど」

 という感じで、「フウー!」と唸った。
 しっぽを大きく振り回している。

 ――なるほど。

 と思った。

 続けて、水を出してみる。
 猫は喜んで水をぺろぺろと飲み始める。

 顔が十分に近づいたところで、出てくる水の量を多くしてみた。
 うちの猫の顔に水がかかる。びくんと体を震わせる。
 そして、

「なにするのよ!」

 と唸りながら僕の手にねこパンチを繰り出してきた。

 ――すごい! わかってるんだ。

 僕のおかげで水が出てくることも、僕が水の量を調整していることも、水を飲み終わるのをじっと待っていることも、うちの猫は全部わかっているのだ。
 わかった上で、僕をこき使っているのだ。

 さすがだ! うちの猫はやっぱりかわいいくて――賢い!

 それからしばらく、うちの猫の機嫌は悪いままだった。

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小説家になろうに、猫のエッセイを投稿しています。
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うちのかわいいかわいい猫
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