うちの猫の嫌いなボール

そっぽを向く猫


うちの猫の嫌いなボール


 うちの猫がネズミの人形を大好きなのは間違いない。
 けれど、そればかりだと飽きるかもしれないと思って、ほかの遊び道具を用意してみたこともある。

 結論から言うと、うちの猫はボールが嫌いだ。

 買ってきたお手玉のような小さなボールを目の前で振ってみる。ジャリジャリと音がする。

「これはなんでしょーかっ! なんだろー! それー!」

 という言葉とともに、放り投げる。
 ボールは空中に高く舞い上がって、引力につかまる。
 勢いが止まって、こんどは床に向かってだんだんとスピードを上げる。

 べたっ!

 床に落ちたそれを猫が見つめた。
 僕のほうに視線を動かして、

「何か落ちたわよ?」

 という顔をする……。

 ずっと座ったままだった。
 うちの猫がお手玉のようなボールを追いかけることはなかった。


 ボールの中に鈴が入っていて、動かすと音が鳴るタイプのものを買ってきたこともある。

 猫の前でごろごろ転がしてみる。
 いちおう、視線はついてきているようだった。

「ほらー! ボールですよ!」

 僕がうちの猫に向かってボールを転がすと、前足に当たって止まった。
 猫は少し前足を動かして、ボールが足に触れない位置に座りなおした。触りたくないらしい。

「ボールですよ……?」

 僕が言うと、うちの猫は「ふんっ」と小さく鼻を鳴らしていた。


 サッカーボールくらいの大きさのゴムボールを買ってきたこともある。
 これはすごくやわらかくて、ぶつかっても痛くないから、思う存分遊ぶことができる。

「うわー! ボールですね!」

 僕がそう言った時点で猫はそっぽを向いていた。そこまで嫌がらなくてもいいと思う。

「うーん……」

 いちおう猫のほうに転がしてみた。
 猫はそっぽを向いたまま、ゴムボールを押し返して、それから少し離れた場所に移動してしまった。

「そうでしたか……」

 僕は肩を落とし、ボールを回収して部屋を出た。
 せっかく用意したのに遊んでもらえなかった。不満が残る結果だ。


 うちの猫が好きなものは、ネズミの人形、紙袋、小鳥。
 もちろんそれだけじゃない。まだほかにもたくさんある。
 そのひとつがかくれんぼだ。

 部屋のドアを出たところで僕は立ち止まった。

 ――このままあきらめるわけにはいかない。

 体は完全に部屋から出たままで、顔だけをそっと部屋の中に戻してみる。
 うちの猫がビクッと体を震わせて、僕の顔を見つめていた。

 すぐに顔を引っ込めて、少ししてからまた顔を部屋の中に突き出すと、

「あっ! またいる!」

 という顔で、うちの猫が僕をじっと見つめていた。
 目が大きくなって、耳がこちらを向いていて、興味津々という表情だった。体は動いていない。しっぽだけがふわりふわりと動いていた。

 今度は腰をかがめて床に近いところから顔を出してみる。
 猫は視線をさまよわせて、僕を見つけると、

「うわっ! 下にいた!」

 という顔をしていた。

 僕が顔を覗かせるたびに、猫は「いた!」という表情で固まるのだけど、顔を引っ込めている間は少しずつ移動しているらしい。
 何度も繰り返すうちに僕のほうへだいぶん近づいていた。

 ついにダダダッと走りこんで、部屋の外にいた僕のところにたどり着いてしまった。

「やっぱりいた!」という表情でぐるぐる足元を回り、においを嗅いで、それから満足して部屋の中へ戻っていった。

 ――ふう。ボールが嫌いなのは、もう仕方がないですね。別にいいです。

 ひととおり遊んでもらって満足した気分になって、僕はボールをクローゼットの中に仕舞った。たぶん、もう使うことはないのだろう……。

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小説家になろうに、猫のエッセイを投稿しています。
かわいいです。
うちのかわいいかわいい猫
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アルファポリスでは、ファンタジーの連載を初めてみました。
気軽に読んでみてください。

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