うちの猫の仕返し


 うちの猫の仕返し


 暖かくなったり、寒くなったり、最近はっきりしない天気が続いたせいで、僕のベッドには季節はずれの毛布が置いてある。

 さすがにもう必要ないと思うのだけれど、そう思ったとたんの寒波で押入れを探すはめになったものだから、念のためにしばらく畳んで置いておくことにしたのだ。




 僕がデスクに座り、パソコンの画面に向かっていると、うちの猫がゆっくりと僕の部屋に入ってきた。

 本人は気づかれていないつもりのようだ。音をたてないようにして、ベッドに登っている。

 ベッドに座ると顔を思い切り毛布に近づけて、左右の前足を交互に動かして押し始めた。すぐにゴロゴロというのどを鳴らす音が聞こえてくる。

 これはいったい何をやっているのか――僕は知っている。

 猫がこういうことをするときは、お母さんに甘えている気分になっているらしい。前足で交互に毛布を押しているのは、お母さんのおっぱいをもらっているときの動作だ。こうやって刺激をすると、母乳が出てくるらしい。

 すべてインターネットに書いてあった。

 背後に近づくと、うちの猫は「ううーん……」と甘えた声を出していた。

「あれえー? 何やってるんですかあー?」

 少し執筆が進んだので、僕のテンションは上がっていた。

「お母さんに甘えたいんですかあー?」

 うちの猫をつつきながら言う。
 目を細めながら、

「やめてよ! 邪魔しないでよね!」

 というように猫が鳴く。

「どうしたんですかあー?」

 僕に煽られてもどうにもやめられないらしい。うちの猫は僕の指から逃れようと必死に顔を動かしながら、毛布を押し続けていた。

 たまにはうちの猫をからかうのも楽しい。つつかれてるけど毛布を押すのはやめられないようで、「のどをゴロゴロ鳴らしちゃう! くやしい!」といった様子だった。




 それから数日して、僕はお風呂に入っていた。

 さっぱりして、お風呂場から脱衣所に入ったとき、何かの気配を感じた。

 ――誰か、いる!

 脱衣所のカゴの近く、積み上げられたタオルの後ろに、うちの猫が静かに座っていた。

「ああ、なんだ、誰かと思いましたよ。いつ入ってきたんですか?」

 ドアが開いた音は聞こえなかった。僕が入ってきたときに閉めたままだ。ということは最初からうちの猫はいたのだろう。気づかずにお風呂に入ってしまっていたのだ。

「隠れてるわけじゃないんだから、鳴いてくださいよ。出れなくて困ったでしょう?」

 うちの猫は返事をせずに僕を見ている。ガン見だ。全裸を見て、のどをゴロゴロ鳴らしている。

「あの……体を拭きますね……」

 僕が畳んでおいてあるタオルに手を伸ばした瞬間、うちの猫の前足がダンッ! とタオルの上に乗った。

「えっ……ええ?」

 タオルを引っ張っても、爪を立てて押さえられているせいで、取ることができない。
 うちの猫はうれしそうにのどをゴロゴロ鳴らしている。

 ――これは……。

 と僕は思った。

「仕返しですか……機会をうかがっていたんですね……」

 数日前のことなんて覚えているはずはないのだけれど、そうとしか思えないうちの猫の行動だった。

 タオルからなんとか爪をはがし、かわりに腕に爪を立てられながら、僕は体を拭いた。別のところに爪を立てられなくて良かったと思う。

「確かに調子に乗りましたけど、そんなに仕返しがしたかったんですか……」

 着替えて脱衣所を出る僕の足を追いかけながら、うちの猫は何度も繰り返しパンチをしていた。

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小説家になろうに、猫のエッセイを投稿しています。
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うちのかわいいかわいい猫
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アルファポリスでは、ファンタジーの連載を初めてみました。
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