うちの縄張り争い


うちの縄張り争い


 庭にまた知らない猫が現れた。
 
 育ちの良さそうなきれいな毛並み。
 灰色をベースにしたまだら模様で、前足の先だけ白くなっている。
 毛並みの灰色はうちにある靴下の色合いに似ていたし、前足の白い部分も靴下みたいだった。
 首輪をしているから、どこかの飼い猫なのだろう。
 かわいくて、こざっぱりとした猫だ。

 靴下猫が右端、うちの猫が左端で、真ん中にボス。
 数メートルの間隔で、三匹がオリオン座のように並んでいた。
 
 じっと座っているから、仲がいいのかと思ったらそうでもないようだ。
 靴下猫が「うぅー」と小さな声で唸っている。威嚇している声だった。
 その威嚇の先は……どうやらうちの猫のようだった。

 ――うちの猫を威嚇している……!?

 見た目はきれいだし、首輪もつけているのでちゃんとした猫かと思ったら、とんでもない猫だった。

 ――この猫……なんてことをしてるんですか!

 うちの庭では許されないことだった。




 真ん中にいるボスに視線で合図を送る。

(ちょっとこらしめちゃってください……!)

 ボスはしばらくきょとんとしていたが、わかってくれたようだ。
 靴下猫をちらちら眺めながら、少しずつ距離を縮めていく。
 かなり気にしている。警戒しているのかもしれない。

 ――ボスでも警戒する相手ということですか……!

 凶暴そうには見えないけれど、油断できない猫のようだった。

 そして――ボスがダンッと地面を叩いた。
 すぐ横でぴょんとバッタが飛び跳ねた。
 慌ててきょろきょろして、また地面を叩いている。
 バッタを見失ってしまったようだ。
 靴下猫のせいで集中ができなかったのかもしれない。
 くんくんと地面のにおいをかいでバッタを探しながら、ボスはそのまま庭から離れていってしまった。

 ――おい! バッタを捕まえてる場合じゃないでしょ!

 と僕は思った。

 靴下猫はあいかわらずちいさく唸っている。
 ボスがいなくなったことで遠慮がなくなっているような気もする。
 うちの猫は何度も座りなおしている。落ち着かないのだろう。
 張り詰めた空気だった。

 靴下猫が一歩踏み出した瞬間、うちの猫が「フシャー」と威嚇した。

 ――やめときましょうよ……。

 うちの猫が喧嘩をして、勝てる未来が想像できない。
 体格も違うし、いつもへっぴり腰だし……。
 本気を出せばそれなりに動けるのだろうけど、それでも普通の猫と喧嘩して勝てるとは思えない。

 だが、うちの猫は気が強い。
 完全に戦闘モードになってしまっていた。

 にらみ合う二匹を見て、僕はうちの猫の背後に移動した。
 靴下猫が動くそぶりを見せた瞬間、僕は顔を突き出して「ううぅー」と唸った。さらに思い切りにらみつける。
 動揺したのか、靴下猫が後ずさりをした。
 うちの猫は気にせず「わーう、わーう」と唸っていた。

 じりじりと、また靴下猫が近づいてくる。
 飛び掛りそうな体勢になったタイミングで、僕は「ううぅー!」と唸りながらバッと両手を挙げ、足で地面を踏み鳴らした。
 驚いた靴下猫が逃げようとするのをうちの猫が追いかける。
「フギャー!」と叫びながら靴下猫は慌てて走り去っていった。
 うちの猫は庭の端まで追いかけて、しばらく様子を見て戻ってきた。

 ぶんっぶんっとしっぽを振り回しながら、

「ま、こんなもんよね」

 と得意げな顔で家のなかに入っていった。

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小説家になろうに、猫のエッセイを投稿しています。
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