うちの油断する猫


うちの油断する猫


 玄関先でうちの猫が奇妙な動きをしていた。
 
 ぴょんと小さく飛び上がって、地面を押さえつける。
 そのままいつでも動けるような体勢で、座りこむ。目をぎらぎら輝かせながら。
 少しして、何かを見つけた様子でじたばた動き回って、またぴょんと飛び上がる。すぐに地面を押さえつける。

 なにをしているのかというと、トカゲを捕まえて遊んでいるのだった。
 地面を押さえつけるときに、一緒にトカゲも押さえつけていた。

 ここから、また不思議な行動をする。
 トカゲがぐったりして動かなくなると、うちの猫は押さえた手を離す。
 せっかく捕まえたのに、動かなくなると油断してしまう。
 しかも、そのときにトカゲを見失っているようだった。
 
 そろそろとトカゲが動き出しても反応をしない。
 隙を見て、トカゲがダッシュする。ようやく気づいて、はっとした顔になって、捕まえる。
 そして動かなくなると、また手を離す。トカゲが逃げようとする。繰り返しだ。

 ――遊んでいるだけかな?

 とも思う。
 でも、はっとした顔は、本気でびっくりしているように見えた。

 ――そういえば、猫は目が悪いって話も聞くし……普通に見失うのかな? そもそも逃がしちゃうのはなんでだろう……。やっぱり遊んでるのかな?

 そう考えながら眺めていると、うちの猫がドヤ顔でトカゲを咥えて、僕のところへ持ってきた。
 ぽとりと足元に落として、ちょっと目を細めている。

「すごいですねー! トカゲ捕まえるのうまいですねー!」

 鼻をつんつんすると、うちの猫は尻尾をぴくぴく動かして、ご機嫌な様子だった。
 
 足元ではこっそりトカゲが逃げ出していた。
 すぐに草むらに入って、見えなくなってしまった。

 うちの猫は僕の指に顔をこすり付けていて、それに気づくことはなかった。

 ふと、地面を見下ろすと、何もない。
 例のはっとした顔になって周りを見回している。
 ぐるぐると歩きながら、

「うぅーん、うぅーん」

 と悲しそうな声を出していた。

 しばらくして、立ち止まって、靴のにおいをかいで、ちらちらと僕の顔を見るようになった。

「どうしたんですか?」

 ぺしぺしと前足で押して、僕をどかそうとしている。

「うん? 何ですか?」

 僕が自分の左足を後ろに下げると、「おかしいなあ」という顔で、今度は右足を気にしている。
 においをかいで、ちらちら。

「もしかして、僕がトカゲを隠したと思ってるんですか……? 靴の下にはいないですよ。もう逃げちゃったんですよ。ほら……」

 それからも僕をちらちら見ながら「うぅーん、うぅーん」と悲しい声を出して歩き回っていた。


 結局、うちの猫はトカゲが逃げたことに納得しなかった。
 最後まで僕が隠したと思っていたようだった。

 すぐに獲物を見失ったり、逃げ出すことに気づかなかったり、うちの猫には野生の本能のかけらもない。

「うぅーん、うぅーん」

 いつまでも悲しそうに鳴いている姿を見て――

 かわいい! と思った。

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小説家になろうに、猫のエッセイを投稿しています。
かわいいです。
うちのかわいいかわいい猫
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