うちの寒がりさん


うちの寒がりさん


 押し入れの奥に古い電子ヒーターを見つけた。
 足元を温めるちいさなヒーターだ。
 ホコリをかぶっていたので軽く拭き取って、電源を入れてみる。
 じゅーんと音をたてて、赤く発光をし始めた。
 どうやら、まだちゃんと使えるようだった。

「見慣れないものがあるわね」

 うちの猫がヒーターに近づく。
 しばらくうろうろして、暖かいことに気づいたらしい。
 目を細めてヒーターにすりすりしていた。

「あの……去年もそんなことをしてひげがおかしなことになりましたよね……。学習しましょうよ……」

 そう僕が言っても、うちの猫はヒーターの前から動こうとはしなかった。


 布団も冬仕様のものに変えた。
 何枚も重ねているので重たいけれど、十分に暖かい。
 これで、夜中に寒くて目が覚めてしまうことはなくなりそうだった。

 
「さて、そろそろ寝ますかね」

 ホットミルクを一杯飲んで、準備は万端。
 僕が階段をあがるとうちの猫が後ろからついてきた。

「もう寝ますよ? 遊ぶのは明日にしましょう?」

 うちの猫は気にせずトコトコと僕を追い抜いて部屋に入っていく。
 ベッドの前で、おとなしく座る。
 そして、布団に潜りこむ僕をじっと眺めていた。

「いい子にしてても遊ばないんですよ。おやすみなさい」

 電気を消すと、僕の胸の上にうちの猫が飛び乗ってきた。
「おふっ」と声が漏れてしまう。
 こんなことをされて、遊んであげるわけにはいかない。
 ぎゅっと目を閉じて寝たふりをする。
 うちの猫はごそごそと布団を引っ掻いて、「うぅーん、うぅーん」と鳴いていた。

 ――これはもしかして?

 布団を持ち上げてみる。
 できた隙間に、うちの猫がおずおずと入ってきた。

「なんだ、一緒に寝たかったんですか」

 こうやって堂々と入ってくることはめずらしい。
 気がつくとこっそり布団の中に寝ているという記憶しかない。
 今回は寒くて布団に入りたくなったけど、自力では掛け布団を持ち上げられなかったのだろう。

 ――この調子で布団に入ってきてくれるなら、今年の冬は楽しく過ごせそうですね。
 
 全身が潜りこんでしまったので、うちの猫がどこら辺にいるのか、布団の上からでは確認はできない。
 手を伸ばして探してみると、すぐに「うぅー」と威嚇する声が聞こえてきた。

「ちょっと……怒らないでくださいよ。これは僕の手ですよ……」
 
 とりあえず近くにいることはわかった。
 それだけでも満足だ。

「じゃあ、おやすみなさい」

 とつぶやいて、僕は目を閉じた。


 ――とは言ってもすぐには眠れない。
 布団の中から真っ暗な天井を見上げる。
 仰向けだと寝にくいかな、と思って寝返りをうつ。布団が僕の動きに合わせて僅かに移動する。
 すると、またちいさく「うぅー」といううなり声が聞こえた。

「あっ、ごめんなさい。もとに戻しますね」

 布団がちょうどいい感じにかかっていたのを僕がずらしてしまったみたいだ。
 仰向けの体勢に戻る。

 落ち着かなくて手の位置をお腹のうえに変えた。
 そっと動かしたのに、「うぅー」という声が聞こえる。
 今回もまずかったようだ。
 布団のなかがどうなっているのかはわからないけれど、かなり微妙なバランスが成立しているらしい。
 仕方なく、うちの猫を邪魔しないように窮屈な姿勢で眠ることになった。
 
 ――一緒に寝るのはうれしいんですけど、これは僕の思ってたのと違いますよね……。なんで機嫌が悪いんですか……。

 そのうちに布団で一緒に寝ることにも慣れてくるかもしれない。

 ――それまでは我慢ですかね……。

 布団の中は窮屈だけれど、いつもよりもホカホカしている気がした。

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小説家になろうに、猫のエッセイを投稿しています。
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