うちの困ったプレゼント


うちの困ったプレゼント


 僕が玄関のドアを開けると、ボスがトコトコと歩いてきた。
 その後ろを同じスピードで、シマシマシッポが追いかけている。
 僕をめがけて歩いてきているようだ。

 ――わっ、何ですか、これ!? かわいい!

 二匹がトコトコと歩く姿をもっと見たいので、走って逃げることにした。
 距離が遠くなりすぎないように、注意しながら家の周りをぐるっと走って逃げる。
 ボスは決して走らずに、必死にトコトコと足を動かしながら追いかけてきていた。その後ろにはちゃんとシマシマシッポもついてきている。

「ふぅーん」

 ボスが悲しそうな声で鳴く。

「ハアハア……これくらいにしておきますか」

 僕が立ち止まると、ボスが足元にドカッと座り込んだ。
 シマシマシッポがその近くをうろうろして、「邪魔だなあ」というように「あうう」と鳴いた。ボスが目を細めて知らんぷりをしていると、シマシマシッポはボスのうえによじ登ろうとしていた。ボスは気にせずにゴロゴロとのどを鳴らして、じっとしている。
 どうやらボスとシマシマシッポは仲良くしているようだった。
 



 リビングでコーヒーを飲んでいると、「あうあう」と聞いたことのある声がした。
 窓ガラスの向こうにシマシマシッポがいる。
 うちの猫が、家のなかの少し離れたところからそれを見つめていた。
 警戒しているのか、仲良くしたいのか、どちらなのかよくわからない。微妙な距離だ。
 窓ガラスごしだと、あいさつができないのかもしれない。

 ――これならおしゃべりできますよ。

 と窓をほんのちょっと開けてみた。
 すぐにすき間にからだを寄せて、シマシマシッポが家のなかをのぞきこんできた。
 入ってくることはできないくらいのわずかなすき間だ。

 しばらくして、ちいさな前足がすき間からそろそろと入ってきた。窓の周囲をごそごそと探っている。
 するとうちの猫が反応した。
 耳としっぽをピンと立て、頭を低くしながら近づいていく。
 そして、シマシマシッポの前足を、ペチン! と叩いた。
 驚いたシマシマシッポが手を引っ込める。
 それからまた、そろそろと前足を伸ばしてきた。
 それをうちの猫がペチンと叩く。
 叩くといっても勢いはない。じゃれているつもりなのかもしれない。

 ――シマシマシッポも嫌がっている感じじゃないですけど、一方的にそういうことをするのはやめましょう……。あいさつをしてほしかったんですけど……。

 窓を閉めると、うちの猫は鼻をならしながら去っていった。
 シマシマシッポも首をかしげて、「あうう……?」と鳴きながら歩いていった。




 別の日に庭へ出ると、シマシマシッポがトコトコと歩いてきた。
 これは、もう見慣れた光景になってしまっている。
 ちょうどうちの猫も日向ぼっこをしていて、つんと澄ました顔で庭の木を眺めていた。
 威嚇はしないので、すこしは慣れてきたらしい。シマシマシッポのところへ駆け寄っていったりはしない。

 じわじわと、シマシマシッポがうちの猫に近づいていく。確実に気づいているはずなのに、うちの猫は木を眺めたままだ。
 二匹とも鳴かない。
 静かに距離が縮んでいく。

 ポトリ。

 シマシマシッポが口を開くと何かが落ちた。黒っぽいちいさな物体だ。うちの猫の足元に落ちている。
 うちの猫が反応して、その物体のにおいを嗅ごうとした。
 シマシマシッポが、場所を譲るように後ずさりをした。
 じっくりとにおいを嗅いだあと、ふんっと鼻をならしながら、うちの猫は去っていった。いつもの行動だ。

 僕は近づいて、黒っぽい物体の正体を確認した。

 ――やっぱり……。

 そこに落ちていたのはトカゲだった。
 生きていたらうちの猫も興味を持ったのかもしれないけれど、まったく動かない。死んでしまっている。
 シマシマシッポとしては、プレゼントのつもりなんだろう。

 ――うちの子は、魚ですらあんまり食べないですからね……。トカゲをプレゼントしても食べないです……。

 シマシマシッポはちょこんと座って、「あうあう」と首をかしげている。

 ――食べられないにしても、もうちょっと気をつかった対応ができればいいんですけどね……。せっかくトカゲを持ってきてくれたのに……。

 とはいえ、さっきの様子を見たところ、シマシマシッポのことを嫌がっているようではなかった。どう仲良くなればいいのかわかっていない感じだった。

「これに懲りずにまた仲良くしてくださいね」

 と頭を撫でると「あるるるるう」とのどを鳴らしながら、返事をしていた。

「じゃあ、トカゲは持っていってください。処理しちゃってくださいね」

 シマシマシッポは不思議そうに僕を見上げた。
 しばらくしても動かない。
 僕を見つめて、何かを待っている。
 トカゲは目の前に落ちたままだ。

「あの……」

 シマシマシッポの考えていることが、なんとなくわかったような気がする。

 ――どれだけ待っても、僕は絶対にトカゲは食べないんですよ……。

「あうあう?」

 シマシマシッポは何かを期待するような目で、僕をじっと見つめ続けていた。

うちの猫目次
スポンサーリンク

投稿サイト

小説家になろうに、猫のエッセイを投稿しています。
かわいいです。
うちのかわいいかわいい猫
このブログでも、一部を掲載しています。

アルファポリスでは、ファンタジーの連載を初めてみました。
気軽に読んでみてください。

ランキング

スポンサーリンク