うちのこわいお姉さん


うちのこわいお姉さん


 シマシマシッポはすっかり僕になついてしまった。庭に出るとかけよってきて、足元をうろついて、背中をこすり付けようとしてくる。
 仲良くなりすぎたかな、とも思う。でも、家の中に入ってきて困らせることはない。
 玄関までついてきたりはするけれど、そこで座って見送ってくれる。
 この子もなかなか賢い猫だった。

 家のなかではうちの猫が待っている。猫三昧だ。
 いままで、こんなにたくさんの猫に囲まれる生活をしたことはなかった。猫にモテる、猫モテ期がきたのかもしれない。これは誰でも、人生で一度は来るものらしい。

 うちの猫はシッポをピンと立てて、おしりを向けていた。

「あっ、もしかして、なでなでして欲しいんですか? それなら、なでなでしちゃいますよー」

 僕はシマシマシッポと遊んで、そのままのテンションだった。
 そうしてうちの猫に近寄ろうとすると、近づいたぶんだけ、トコトコ移動してしまう。

 トコトコ……。
 トコトコ……。

「もう! シマシマシッポは自分からすりすりしてくれるんですよー」

 と僕が言うと、ちらりと顔だけ振り向いて、すぐにトコトコと歩いて去ってしまった。




 別の日に、裏庭へ向かうと、待ち構えていたようにシマシマシッポがかけよってきた。

「あら、今日も来たんですか? しょうがないですねー」

 座りこんで話をしていると、何かの視線に気づいた。
 うちの猫だった。
 家の中にいて、近くの窓から、僕とシマシマシッポの様子を見つめている。
 瞳孔が開いていて、ギロリ、という感じでにらんでいた。

「あはは……。ほら、こわいお姉さんがいますよ。また今度遊びましょうね」

 と僕は倉庫へ向かった。
 だが、シマシマシッポも一緒についてきてしまう。
 必死にトコトコ追いかけてくるので、もう少し相手をしてあげることにした。

「そんなに誰かに甘えたいんですか? 子供だからでしょうか。それにしてもひとに慣れてますよねー。やっぱりどこかの飼い猫なんですか?」

 と話していると、視線を感じる。
 さっきとは別の窓から、うちの猫が見つめていた。
 僕を追いかけてきたらしい。

 ――そんなに気になりますか……? 普段は全然甘えてこないのに……。

 足元では、シマシマシッポがうろうろしながら背中をこすり付けている。

 ――こんなふうに甘えたらいいんですよ。

 窓の向こうでは、うちの猫も同じようにうろうろしていた。

 ――そうそう。そういう感じです。

 それから僕は、二匹を置いて、庭の草刈りを始めた。


 ひととおり草刈りをして、植木バサミを倉庫に戻す。そして、家の中に入ろうと玄関へ向かう。
 するとタッタッタッとシマシマシッポが走り込んできた。
 僕の足音に反応したようだ。

「もう遊びませんよ。充分遊びましたからね。また今度です」

 と言いつつも、悪い気はしない。
 シマシマシッポのおでこをツンツンしていると、バアン! という音が背後から聞こえた。
 驚いて振り向くと、窓ガラスの向こうに、うちの猫が座っている。

 ――ええ? いまの……窓を叩いたんですか?

 威嚇する姿はよく見るけれど、窓を叩いているところを見た記憶はない。

 ――どうかしたんですか?

 慌てて、玄関へ向かう。
 家のなかには、うちの猫の姿が見当たらなくなっていた。

 ――ついさっきまでいたのに……。

 呼んでも出てこない。
 返事もないから、心配になってしまった。




 しばらく探して、なんとかうちの猫を見つけることはできた。
 本棚の後ろのすき間に入っている。
 そこでじっと座ったまま、動こうとしない。

「探しましたよー。そんなところで何してるんですか?」

「……」

「何ですかー? 怒ってるんですか?」

「……」

「あの……シマシマシッポと遊びましたけど、ちょっとだけじゃないですか」

 と言いながらも、見せつけるような行動がよくなかったのかもしれない、と僕は考えていた。

「……もう、ああいうことはしませんから、出てきましょう」

「……」

「……あっ、そろそろご飯の時間ですね」

「……?」

「今日はかつおぶしがありますよー」

「ニャッ!」

 かつおぶしのおかげで、うちの猫は飛び出してきた。

 今回はなんとかこれですんだ。
 でも、もう少し気をつけて行動したほうがいいのかな、と思う。
 本当に怒ったり、拗ねたりしているのかはわからないけれど、うちの猫が不満に思うようなことは、なるべくしたくない。
 
 ――シマシマシッポと遊ぶのは、なるべくうちの猫が外にいるときにしておこう。

 と心に決めた。




 それから数日のあいだ、僕が寝ようとすると、うちの猫がベッドに近づいて来るようになった。

「あら? 一緒に寝ましょうか」

 と声をかけると鼻をならして顔を背ける。
 そのまま、ベッドの足の方へ向かって、僕の足の先のところに潜り込む。

 ――どうせなら、顔が見えるところで寝たらいいのに……。

 これはうちの猫なりに甘えているのかもしれない。

 ――近くで寝ましょうよ。

 ベッドに寝そべったまま、つま先でうちの猫を探していたら、ペチン! と猫パンチが返ってきた。

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小説家になろうに、猫のエッセイを投稿しています。
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