ボスと元気なシマシマシッポ


ボスと元気なシマシマシッポ


「おお、今日も来ましたね」

 裏庭にやってきたボスに、僕は声をかけた。
 怪我は良くなってきているようだ。
 顔の腫れがひいている。
 とは言っても、まだ痕は残っている。
 おかげでボスは、貫禄のある見た目になっていた。
「どっこらしょ」という感じで、のんびりとからだを動かして、ボスは僕の足元で横になった。
 そしてそのままじっとしている。

「はいはい、用意していますからね」

 と僕はちいさなお皿を持ってくる。
 お皿に載った半透明の物体は、アロエだ。
 前足のところに置くと、ボスは首だけ動かして、そのアロエに貪りつく。
 口にくわえてカッカッと噛んで、そのままペロリ。
 なかなかワイルドな食べ方だった。

 怪我をしてから、ボスはこうしてアロエを食べに来るようになった。
 アロエが効いているのかはわからない。
 そもそも経口摂取では意味がないような気もする。
 でも、塗ってみても全部食べてしまうし……。
 まあ、アロエが良いものなのは間違いないと思う。
 食用のアロエで比較的食べやすいから、ボスはただのエサのつもりで食べているのかもしれないけれど……。

 そこへそろりそろりとシマシマシッポが近づいてきた。
 ボスが食べているものが気になるようだ。
 押しのけるようにして、皿の臭いを嗅ぐと、すぐに顔を背けた。
 思っていたのとは違ったらしい。
 そんな様子を落ち着いて眺めて、シマシマシッポが離れるのを待って、ボスはまたアロエを食べていた。

「きれいに食べましたねー」

 皿を空にして、口の周りを舐めているボスに声をかける。
「ありがとね」というように僕の臭いを嗅いで、ボスはゆっくりと歩いていく。
 そこへ待ち構えていたシマシマシッポが駆け寄った。
 どうやら構って欲しかったらしい。
 ボスの周りをうろうろして、まとわりついている。
 ボスは気にせずゆっくり歩いていく。
 シマシマシッポが進行方向を塞ぐように、からだをボスの鼻先にねじこむ。
 するとボスは進路を変える。
 そんなことを何回か繰り返して、らちがあかないと思ったようだ。
 シマシマシッポは助走をつけて、跳び箱の要領で、ボスの背中に飛び乗った。
 勢い余ってすぐに転げ落ちてしまう。
 ボスは立ち止まり、地面に落ちたシマシマシッポに向かって、「クワー!」と威嚇をした。
 珍しい光景だ。
 ボスがこんな風に威嚇をするのは初めて見たと思う。
 シマシマシッポもびっくりしたのだろう。
 ドタバタと走って生け垣の中に逃げこんでいた。
 シマシマシッポが離れたのを確認して、あらためて、ボスはゆっくりと去っていった。

「あはは、怒られちゃいましたね」

 シマシマシッポは生け垣の中でキョロキョロと周囲を見回している。
 まだびっくりしているようだ。

「遊んで欲しいのはわかりますけど、さすがにあんなことをしたら怒られますよ。いまボスは怪我をしてますし」

 僕が指を突き出すと、ビクッと身構えていた。

「あはは。仕方ないので僕と遊びますか」

 と生け垣に一歩足を踏み出すと、シマシマシッポはダッシュで逃げていった。
 残ったのは僕だけ。

「うん……お皿でも洗っておきましょうか……」

 とキッチンへ向かった。

 ――はやくアロエが必要なくなるといいんですけどね。

 もうしばらくは、アロエの用意をしておこうと思った。

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