うちの……マジでもう勘弁してください!


うちの……マジでもう勘弁してください!


 夜、僕がリビングに入ると、何かが壁をサササッと移動しているところに出くわした。

 ――うおっ! あれは蜘蛛!? しかも、めちゃくちゃ大きいですね!

 リビングに巨大な蜘蛛がいたのだった。
 とりあえずパタンとドアを閉めて、僕は廊下へ出た。
 蜘蛛を追い出したいけれど、どうしたらいいのかわからない。
 手で捕まえたら噛まれそうだ。

 ――このまま放置すればいなくなるんでしょうか……。

 何かいい方法はないかと考えていると、うちの猫がゆっくりと歩いてきた。
 キッチンへ行って、ご飯を食べたいようだ。
「そこにいたら邪魔なんだけど!」というように、僕へ視線を向けている。

 ――これです!

「やっつけちゃってください!」と言いながら、僕はリビングへのドアを開けた。
 ちょうどドアのすぐ目の前に、巨大蜘蛛が居座っている。
 しかも、よく見ると二匹だ。
 うちの猫はリビングに入り……蜘蛛を避けてキッチンへ向かって歩いていった。
 見事な知らんぷりだ。

 ――絶対気づいてますよね! なんでこういうときは捕まえてくれないんですか!

 もうドアを閉めて避難するしかない。
 キッチンからは、うちの猫がカリカリをかじる音が聞こえていた。
 そしてしばらくすると、「私、外で遊びたいんだけど」というようにうちの猫が鳴いている声が聞こえた。
 蜘蛛と戦った様子はまったくない。
 結局うちの猫は何もしないまま、蜘蛛はいつの間にかいなくなってしまった。




 別の日に自分の部屋でまったりしていると、

 ブウゥゥーン、ブウゥゥーン……。

 という音が聞こえた。
 虫が飛んでいる音だ。
 やけに近いし、音も大きい。
 まるで部屋の中に虫がいるようだ。

 これはどういうことだろうと見回すと、目の前に蜂がいた。
 スズメバチではないけれど、ミツバチよりも大きい。
 そこそこヤバそうな蜂だ。
 それが僕を観察するように、空中にとどまっていた。
「ほあっ!?」と悲鳴をあげると、その蜂は僕を狙っているかのように頭の近くを飛びまわる。
 持ち前の反射神経 (にぶい) で蜂を避けながら、壁に激突しつつ、なんとか部屋から逃げだすことはできた。
 ドアを閉めて、ひと息ついて、これからの対策を考える。

 ――部屋の窓は閉まっていたから、このまま放置しても蜂はいなくならない……。そもそもどこから入ってきたのかという話ですが……それならいまやるべきことは……!

「うおお!」と中腰の体勢で頭をかばいながら僕は部屋の中へ突入し、窓を開け、積んであった本の山をなぎ倒し、すぐに脱出した。

 ――これで、窓は開けました。あとは蜂が出ていくのを待つだけ! 放置でいいでしょう。

 蜂と直接対決するのは無理なので、時間に解決してもらうことにした。

 しばらくして、ちょっとだけドアを開けて、中の様子をうかかうと、蜂がガンガン壁にぶつかっているところだった。
 窓が開いていることに気づいていないようだ。

 ――アホな蜂ですね。しかも、これ、たぶん怒ってますね……。

 ものすごい勢いで壁に体当たりする蜂を眺めながら、僕はそっとドアを閉じた。

 お風呂に入り、のんびりコーヒーを飲んだあとで、僕は自分の部屋へ戻った。
 ドアを開けると……蜂の羽音は聞こえない。

「はあ、ようやく出ていってくれましたか。じゃあ更新チェックをしま……ほあああ!」

 油断したところで、ブウゥゥーンという音が聞こえてきた。
 どこかに隠れて休憩していたらしい。
 すぐに部屋を飛び出して、リビングへ逃げこんだ。

 その後、何度確認しても蜂が部屋から出ていくことはなく、たまに物陰に隠れていなくなったように見せかけるフェイントが織り交ざり、僕の神経は次第にすり減らされていった。
 最初に蜂を発見してから4時間以上経っていたと思う。
 日付も変わってしまった。
 それでもまだ僕の部屋にいる。
 もう、限界だった。

「クソッ。マジでなんなんですか……あの蜂……」

 真っ暗なうちの庭で僕は膝を抱えていた。
 このままだとリビングで寝ることになるかもしれない。
 それだけではすまないかもしれない。
 もしかすると、あの蜂は一生僕の部屋に居座り続けるかもしれない。
 そんな不安が頭をよぎった。

 そこへトコトコとうちの猫が歩いてきた。
 遊びに行って、こんな時間になってようやく帰ってきたのだ。
「なんでこんなところにいるのよ」というように目を細めている。

 ――ついに来ましたか。

 僕の頭の中で、ずっと温めていた作戦があった。
 あの蜂に占領された部屋の中に、うちの猫を入れて、戦って追い出してもらうというものだ。
 うちの猫が蜂に反応するのかという点と、蜂に勝てるのかという点に不安が残る、問題だらけの作戦だけれど、何もしないよりはましだ。
 そしていま、作戦の要であるうちの猫が帰ってきたのだ。

 さっそくうちの猫を連れていこうと手を伸ばすと、「触らないでよね!」という風に逃げられてしまった。
 すぐに暗闇に消えていった。
 作戦失敗だった。

 うちの猫と入れ代わるように、シマシマシッポがやってきた。
 べたりと横になり、「こんな時間になにしてるの?」というように僕を見つめている。

 ――これは、プランBですね!

 プランBとは、うちの猫よりも運動神経、反射神経ともに優れたシマシマシッポを僕の部屋に入れて、蜂と戦い追い出してもらうという、比較的成功率の高い作戦だ。
 手を伸ばすと、シマシマシッポは自分から、僕の腕のなかに飛びこんでくる。

 ――どうやら士気も高いようですね。

 抱えたまま家に入り、階段を上って僕の部屋の前へ。
 ドアをちょっと開けて、シマシマシッポを送り込んだ。

「頼みましたよ!」

 あとはシマシマシッポの活躍を待つだけだ。

 30分ほど経って、自分の部屋へ戻ると、シマシマシッポはベッドの上でくつろいでいた。
 あくびまでしている。

「おお、やりましたか!」

 耳をすませても、蜂の羽音は聞こえない。
 うまく追い出してくれたようだ。

「これで安心して寝られますねー!」

 ベッドのうえのシマシマシッポを思いきり撫でまわした。
 いつもと違う状況に若干戸惑いを見せつつも、シマシマシッポは僕にお腹を向け、僕はそこに顔をうずめてスリスリした。
 シマシマシッポは身もだえしながら、マクラが気になるらしく、しきりにそれを叩いていた。

 しばらく撫でて、それからシマシマシッポを抱えて庭へ連れていく。

「今日は本当にありがとうございます」

 手を離すと、ちらちらと振り返りながら、裏庭のほうへ歩いていった。
 家に入ろうとすると、玄関の横に、うちの猫がちょこんと座っている。

「あー! かんじんなときにいなかったのに、いまごろ帰ってきたんですか? 大変だったんですよー」

 ドアを開けて、おでこをペチンと叩くと、「そんなの知らないわよ!」という風にパンチをお返しされてしまった。

 ――まあ、それもそうですね。

 そんなことよりゆっくり眠りましょう、と僕は自分の部屋へ向かった。

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小説家になろうに、猫のエッセイを投稿しています。
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