猫たちの夏模様


猫たちの夏模様


 ふと思い付いて、早朝の散歩に出かけてみた。
 坂を登って、住宅街を離れていく。
 山のうえの神社へ向かう道は、森に囲まれていて、木々が日差しを遮ってくれていた。

 ――おお、こういうのもたまにはいいものですね。

 思ったよりも涼しくて、気持ちのいい風が吹いていた。
 
 いつもはこんなことをしない。
 最近蒸し暑くて眠れない夜があったりして、睡眠が不規則になっていた。
 おかげで無駄に早起きをしてしまった。
 それで、散歩にいこうと思いたったのだ。

 山の一合目くらいで、もういいやと思い、僕は引き返した。
 10分も歩いていない。

 ――まあ、散歩に慣れていないですし、これで充分でしょう。

 だらだらとしたなだらかな坂なので、降りるのは楽だ。
 そうしてぶらぶら帰っていると、タッタッタッと猫が走ってきた。

「おっ、ボスじゃないですか」

 僕が声をかけて追いかけると、ビクンと反応して数メートル距離をおかれてしまった。

「いやいや、僕ですよ。ボス! 僕!」

 そう言うと、ちらりと振り返る。
 肩に力をこめて、警戒している姿勢だ。
 じっとこちらを見ている。

「ほら、僕でしたー!」

 と手を広げて足を踏み出すと、走って逃げていってしまった。
 なんだか避けられたようで、傷ついてしまう行動だった。


「うーん、クーラーつけちゃいましょうか」

 リビングへいくと、家のなかはすでに蒸し暑くなっていた。
 クーラーのために、開いていた窓を閉めて回る。
 すると窓のレールのところに、シマシマシッポが寝ころんでいた。
 僕を見上げて、「入ってないよ?」という顔をしている。

「まあ、たしかにギリギリ家の中には入ってないですね……。はい、ちょっと移動しましょう」

 持ち上げて、窓のすぐ外の地面に降ろした。
 シマシマシッポは特に抵抗をすることもなく、こちらを見上げていた。

 クーラーをつけてしばらくすると、うちの猫がやってきた。
 テーブルの上で、ベタリと横になる。
 前足にあごをのせて、なんだか優雅な姿勢でくつろいでいる。
 上流階級の令嬢といった雰囲気だ。
 こんな挨拶がわりにパンチをするような、武闘派の令嬢は、なかなかいないだろうけれど。

 うちの猫は窓の外を見下ろしている。
 視線の先をたどるとシマシマシッポが見上げていた。

 ――こちらは令嬢に憧れる一般庶民でしょうか。

 何を考えているのかわからない表情で、シマシマシッポは目をパチパチさせていた。


 別の日の朝、洗面所で顔を洗っていると変わった光景を目にした。
 すでに朝日は昇って、日差しが強くなっている。
 その光に照らされて、窓にうちの猫のシルエットがくっきり映し出されているのだ。
 ほとんど開けることのない、すりガラスの小さな窓。
 そのすぐ外に、うちの猫がいるらしい。

 ――こんなところで会うなんて珍しいですね。

 と思っていると、カリカリカリとガラスをひっかきはじめた。
 中に入りたい様子だ。
 その窓はうち開きで、洗濯機が塞ぐように置かれているので、ほとんど開けることができない。

「ここじゃなくて、ほかのところから入りましょうね」

 小声でそういうと、カリカリカリ! という返事が返ってきた。

 ――どうしてもここから入るんですか? うーん、通れるかなあ。

 窓を開けてみると、やはりほんのちょっとしか開かなかった。
 洗濯機に邪魔されて、大きく開かない。
 すき間から僕を見つめて、うちの猫は「ウウーン、ウウーン」と鳴いていた。

「もう、わかりましたよ……。フーン!」

 となんとか洗濯機をずらして、窓を開いた。
 うちの猫はするりと家の中に入ると、僕のことは見向きもせずに、ご飯を食べにいってしまった。

 ――もうここから入ろうとはしないでくださいよ……。

 洗濯機をもとの位置に戻しながら、僕はそう思っていた。


 庭へいくと、ボスが座っているのを見つけた。

「あー! このあいだ、僕から逃げましたよねー。なんで逃げちゃうんですか?」

 と言いながらつつくと、ボスはゴロリと転がって、お腹を僕に向けた。
 背中をくねらせて、さかんに僕へアピールしている。
 このあいだの警戒する様子は微塵も感じられない。
 表情も違うような気がする。

 ――うちの庭だと安心するんでしょうか。

 野良猫をやっていると、普段はあんなふうに警戒しなければならないものなのかもしれない。

「そういうことなら仕方ないですねー」

 とお腹を撫でまわすと、ボスは「フゴフゴッ!」と満足そうに鳴いて、その様子はとても野良猫のものとは思えないものだった。
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小説家になろうに、猫のエッセイを投稿しています。
かわいいです。
うちのかわいいかわいい猫
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